大西 健太

経営デザイン専攻 修士1年

棟近研究室

大西 健太 Onidhi Kenta

2014年度インタビュー

Q 研究内容を教えてください。

医療の分野に品質管理の手法が応用できないかという発想で研究をしています。医療現場の過酷な労働環境や、それに伴う医療事故の問題は広く知られるところとなりましたが、製造業における品質管理のメソッドを応用することで管理できないかと考えているのです。

私は患者と最も密に接する看護師に着目しました。患者の満足度や事故の発生に密接に関わってくる部分なので、大きな効果が出るだろうと思ったのです。

まずは看護師の方に一日中付貼り付いて行動記録を採りました。ただ、その調査結果だけでは何が問題点か分かりづらい部分があったので、次の段階では一日の行動計画を立てて、実際の業務とのずれを計測しようと考えました。この行動計画は一日の業務を全て書き出してもらい、それにかかる時間を予測し一日の業務時間に当てはめるというもので、こちらが用意した用紙に記入してもらったのですが、なかなかこれが難しい。頭の中にはだいたいの計画があるのですが、日々、突発的な事態が起きますし、患者さんによってもかかる時間が変わるので、簡単な作業ではないのです。

なかには行動計画のなかの絶対に必要な点滴などの業務だけで勤務時間がおわってしまい、突発的な事態が起こると即残業という方もいて、過酷な現状を思い知らされました。しかし、ずれを計測し、忙しい病院とそうでない病院と比較で比較すること改善点をあぶり出すことができたケースもありました。

まだまだサンプル数が少ないので具体的な成果に至っていませんが、その一歩目は踏み出せたのではないかと思っています。

ゆくゆくは医療現場でPDCAサイクルを

Q 医療業界を管理することの難しさは?

例えば製造業は作る製品が決まっていて、どの作業にどれくらい時間や人がかかるというのがわかりますが、医療現場は患者が相手ですから患者によって必要な作業もかわりますし、病気の状態やその人の性格によっても時間のかかり方が違います。また急に容体がわるくなったり、新たな問題が勃発することもあります。これらの多様性、突発性を考慮するのが難しいところですね。

ところが、看護師の方に「入院対応にはどれくらい時間がかかりますか?」と聞いてみたら、だいたい皆さん「45分」と仰っていたんです。ですから定量的に分析することは不可能ではないと思うのです。時間が決まっている部分とそうでない部分を把握していくというのが次のステップになるのではないかと思っています。ゆくゆくは経験と勘でマネジメントしていた部分をPDCAサイクルをまわせるようにすることが目標です。

感性、感覚的な分野も分析対象に

Q 研究室で他に取り組んでいることは?

医療の分野では他にも事故の分析手法を研究しています。またBCP※のような災害が起きた際に医療現場を可能な限り速やかに復旧させる仕組みをつくるために、訓練方法や災害対応マニュアルを検討する研究をしている人もいます。医療分野に品質管理の手法を適用するというのは棟近研究室が特に力を入れているところで、日本でも有数の研究室です。それだけの成果も出して評価もいただいています。

もうひとつ大きな柱として感性工学があります。感性や感覚的な部分を数学的、統計的に分析しようとする学問です。例えばペットボトルの形状やラベルのデザインを、インタビューやアンケート調査から統計的手法を使って明らかにしようという試みや、缶ビールの蓋の開け口はどのような形状が開けやすく、おいしく感じるのかということを分析したりしています。

また、ある食品メーカーの通販サイトの設計やダイレクトメールのデザインを考える研究をしている人もいます。この感性工学という分野は、さまざまな商品と人の関係を対象としていてたくさんの「おもしろい」ものが詰まっている分野だと思います。

医療機関や企業との共同研究も盛んで、現場に関われるのも大きな魅力だと思います。管理の進んでない分野に品質管理や生産管理の様々な手法を応用するというのが共通しているとこです。そういった分野は多くの場合に勘や経験に頼っています。そこに光を当て「定性的かつ定量的に」品質を管理するというのが棟近研究室の目指すところと言えます。

 未知の領域を開拓している感覚があるからか、ほんとうに研究が楽しいんです。研究室ではみんなさまざまな研究に取り組んでいて、隣りの席では何をやってるか覗きにいきたくなることもままありますね。

 

※Business Continuity Plan 災害などの突発的な事態で事業やサービスが継続困難になった際の対応マニュアル。