照井 賢治

経営システム工学専攻 修士2年

菱山研究室

照井 賢治 Terui Kenji

2014年度インタビュー

Q 研究内容を教えてください。

ある単語を中国人はサービスの名称だと思っていて、日本人は機械の部品だと思いながら話しをしていたということがありました。当然話しが噛み合ないわけですが、これは文化的な背景を理解していないとコミュニケーション不全に陥るということを端的に示しています。

この話を聞いて面白いなと思ったのがこの分野に興味をもったきっかけです。では、どのようにすれば異文化の人間がより円滑なコミュニケーションをとることができるのか、と考えたのが私の研究のシーズとなりました。

機械翻訳サービスを利用した多言語ケーススタディシステムの研究開発をしています。ケーススタディというのはビジネススクールなどで、企業の実際の事例を取り扱ったケース教材について経営判断、戦略について議論することを言います。その際に使われる言語は多くの場合英語です。経営について議論するのでかなりレベルの高い英語を話さなければいけません。これは英語が母国語でない人にとっては大きな障壁になります。

オリジナルなアイデアはメモの共有

私の開発したシステムではWEB上の他言語チャットを用いて1対1で議論してもらいます。翻訳機能はGoogleのサービスを利用しますが、ご存知のように機械翻訳サービスは完璧とは言えません。私の研究の主眼はその精度を上げることではなく、議論の前に“メモ”を提出してもらうアイデアにあります。ケーススタディの授業の前には予習をして、自分なりの見解を考えてくるのが一般的なのですが、その際に自分なりの見解をメモしてもらい、議論をする人同士で共有します。メモに関してはリアルタイムの機械翻訳よりも時間が取れるので、折り返し翻訳※を使ってできるだけ翻訳の精度を上げるように配慮しました。機械翻訳サービスに誤訳があったとしても、メモから言っていることが類推できますし、冒頭に挙げたようなサービス名と部品名を取り違えることも少なくなります。さらにあるケースに関する相手の考え方を知ることで、円滑な議論を生むことができると考えました。

実験後このケーススタディの会話ログを解析して各国の性格の傾向を分析しました。発言にタグをつけて、どのようなタイプの発言が多かったかを集積しました。

※折返し翻訳:言語Aから言語Bに翻訳するときにAの翻訳文を一度Bに翻訳して、Bに翻訳された文章をさらにAに翻訳して(折返し)戻すことでAの文章が言語Bでどのように翻訳されているかをある程度予測できるというサービス。

分析グラフ

日本人は2,3,4の出現率が横ばいで自分以外の参加者の意見に耳を傾ける傾向がみられ、韓国人は1,4が全発言の80%をしめており、会話に反応するということが比較的少ない傾向にあり、アメリカ人は2が多く3が最も少なく反対か賛成かは表明するが他者の意見に感応することが少ないとがわかった。

この実験結果は過去の各種の分析と符号するもので、性格分析でも成果を挙げることができました。

このシステムのメリットはやはり、「手軽さ」だと思っています。自国語で様々な国の人と議論できれば、世界語である英語を学ぶのと比べて教育コストも時間も節減できますし、なによりもいろんなバックグラウンドを持った人たちがコミュニケーションをとれればそれだけ多様性が担保できると思うのです。

企業でも多様性だ、ダイバーシティだと盛んに言われていますが、いろんな視点を知ることができるというのはビジネスのみならず大切なことだと思います。そういった貢献ができたらという思いがありました。

レンジの広い学びの分野

Q 経営システム工学科を目指したきっかけは?

理系だったのですが、ビジネスに興味があって、わからないながらも父親の読んでいる「日経ビジネス」を読んでいるような高校生だったので、「経営」という言葉のある理系学科ということで興味を持ちました。いろいろと調べてみて、経営システム工学科だったら分野も広いし、いろいろなことが学べそうだなと思ったのです。

最初は経営管理の授業を一生懸命受けていたのですが、ITや情報系のことを学ぶうちに少しずつ今の研究に近づいてきました。これだけレンジの広い分野をあつかっているからこそできたことだなと今になって感じますね。将来何をしたいか明確でない人にもおすすめです。もちろんこのWEBサイトなどでどんなことができるのかはしっかり調べていただきたいですが(笑)

 

Q 将来は?

実は学部生の時に就活をして、思うようにいかない部分もあって大学院進学を決意しました。もう2年勉強させてください、と両親に頭を下げてきたので、大学院にいくからには研究で成果を出そうという思いが強くありました。ですから研究を頑張るのはもちろん、論文もできるだけ書いて、学会もできるだけ参加しました。国際会議では英語でのプレゼンテーションもしましたし、各国の研究者と話す機会も多々ありました。これらは学部卒では経験できないことです。

そうやって頑張った結果なのか、幸いにも外資系のIT企業に就職が決まったので、将来は日本のみならず世界にインパクトをあたえられるような仕事がしたいと思っています。