早稲田大学創造理工学部 経営システム工学科
経営システム工学研究室 写真

経営デザイン専攻
修士1年 大野研究室

鈴⽊ 滉⼤

SUZUKI Kodai

2021年度インタビュー

消費者と企業間の対等な取引を実現するために

Q 研究の概要を教えてください。
Pay what you wantという消費者が価格を決める仕組みについて研究しています。イギリスのロックバンド「レディオヘッド」がアルバムをこの方式で販売したことで話題になりましたが、最低価格はゼロで任意の価格でダウンダードすることができました。
企業と消費者の関係を考える上で興味深い事例で、うまくいけば新しい価格決定の方式として使えるのではないかと考えています。
現代の消費者はインターネット等で膨大な情報を持っていています。さらに、商品も具体的な「もの」だけでなく、サービスやコト消費のような「経験」に重きを置いたものも多くなってきています。 
従来型の製造業的な価格決定プロセスは、原価に利益をプラスするという単純明快な仕組みでしたが、「経験」価値というのは人によって違う。また、消費者が情報を多く持っている状態で、果たしてフェアな取引ができているのかというのも疑問です。
価格決定にも評価や応援の意思、あるいは逆に抗議の意思を込められるような、Pay what you want方式であれば、消費者と企業の対等な取引が行えるのではないかと思ったのです。
これは企業にとってもメリットがあると考えています。金額によって自らのサービスの客観的な評価を知ることができますし、例えばサービスの質が落ちたり時代に合っていなかったりするようなときに、売り上げの減少だけでなく、単価の変化でも感じることができるわけですから、手の打ち方も変えられるかもしれません。
ただ、企業がPay what you want方式を積極的に利用するためには、ビジネスですから利益を最大化するための方式である必要がある。これは言うは易しで、消費者が納得して対価を払えるように、可能性を追求していきたいと考えています。

Q 経営デザイン専攻と経営システム工学専攻の違いは
経営デザインの方が、より企業と消費者の関係性に焦点を絞っているのかなと思います。所属している大野研究室は、マーケティング分野であればなんでもできると言っていい。先生の専門はもともとファイナンスで、それをもとに医療経営まで手掛けていらっしゃいますが、根本的にはそれもマーケティングで消費者、患者等の顧客とサービスや製品の提供側との関係性や意思決定を扱っていますから、この範疇に入らないものはあまりないでしょう。
また、経営デザイン専攻では合同ゼミが行われていて、指導教官の大野先生以外からもアドバイスや指導を受けたり、場合によっては研究支援が受けられるのも特徴だと思います。
例えば複雑系が専門の鬼頭先生はシミュレーションはお手のものですが、大野研究室ではあまり扱わないので、その部分は支援を受けようと思っています。

議論の中に、研究のヒントが隠されている

Q 大野研究室の特徴は
議論が多いことだと思います。大野先生以外にも5人の教員がいて、脳科学や行動心理学など、多彩な専門分野をもった教員がいて、皆さんアドバイスと同時に意見を求められます。そこで議論したことが研究のヒントになることもあるので、学生と先生の間も一方通行のやりとりではなく、相互作用のある議論が大事なのだと感じます。
中国からの留学生も多いのですが、彼らとの議論も刺激になります。当たり前だと思っている常識が通用しないこともあるので、前提条件から話すくせがついて、より客観的な意見を持てるようになったと思います。
OB・OGとのつながりが強いのも特徴です。研究室に出入りしている方も多いので、アドバイスをいただくこともありますし、共同研究をしたり、データを提供いただいたりということもありますが、これは大野研ならではかなと。
大野先生の率直なお人柄が人を引き寄せて、今のような形になっているのだと思います。どんな意見も耳を貸してくださるので、自然と人が集まってくるのです。
皆さんにも経営システム工学科に入学して、この雰囲気を味わってほしいなと思いますね。