早稲田大学創造理工学部 経営システム工学科
経営システム工学研究室 写真

経営システム工学専攻
修士2年 永田研究室

⽵崎 裕

TAKEZAKI Yu

2021年度インタビュー

「よく見て・見つけて・解く」という問題解決の流れは 多くの事象に応用できる

Q 研究内容を教えてください。
スポーツの定量的な分析を研究テーマとしています。
現在は「野球」のピッチャーの投球分析をしています。扱っている対象は大きく二つあって、一つ目は球種分類。トラックマンという測定器を用いて計測されたMLBの投球データが公開されているのですが、記録された投球の運動量の数値を用いることで、定量的でより納得感のある球種分類を行うことを目指しています。
もう一つが、変化球の誤球(ごきゅう)の傾向分析です。例えばフォークボールは、意図したように落ちないことがままありますが、投手によっては誤球する際のボールの運動量の数値データが、その投手の別の持ち球に類似している傾向があることがわかってきました。例えばメジャーリーグでも活躍した元楽天の岩隈投手は、通常よりも「落ちなかった」フォークボールの運動量がストレートの運動量と似ている傾向があります。このようなクセや傾向を定性的ではなく、定量的に評価し、スポーツの現場で使えるような「示唆」を出せればと考えているのです。
誤球の判断はトラックマンのデータが示す定量的な球種のデータと、ビデオでの判断や投手の自己申告などの定性的なデータを比べて判断します。
例えば、先ほども例に挙げた岩隈選手は、フォークボールが落ちなかったとき、ビデオでみるとフォークボールの握りで投げていることがわかり、客観的にはフォークボールを投げていると判断していますが、記録された投球のデータからはストレートを投げていると判定される場合があります。
これが楽天の田中将大投手だと、フォークボールが落ちなかったとき、客観的にボールの握りを見ても、データからの定量的な評価(速度や回転数等)でも、「フォーク」と判断され、ストレートには類似していません。
誤球の原因は、この辺りに秘密があるかもしれません。このように、さまざまなデータを見ながら、研究を進めているところです。





データを可視化することで、人の行動も変えていく

Q この研究を選んだ理由は
卒論でもスポーツをテーマに「アメリカンフットボール」のデータ分析をしていました。所属している永田研究室は、統計学を応用したデータ分析に強みがあり、統計学の理論研究からスポーツなどのデータ分析まで、幅広いテーマが研究の題材になり得ます。卒論のテーマを決めるときにいくつか候補を挙げて、その中でデータが取得可能で、かつこれまでの私の経験を活かせるテーマがアメフトだったのです。今回の野球については、学部でのスポーツデータの分析経験を生かしたいと考えテーマを探していく中で、尊敬する永田研究室の先輩が野球の球種分類を研究なさっていたこともあり、研究テーマを引き継がせていただきました。
永田研究室に惹かれたのは、忘れもしない学部1年の統計解析法の授業。実は、その頃あまり勉強に集中できていなかったのですが、中間テストの結果を先生がヒストグラムで見せてくれたのです。そのデータは左側に長く裾を引くと言われる分布で、低得点者が少ないものでした。私は少ないはずの低得点者の中の一人に入っていたので、「これはまずい」と奮起することができました笑。こんな風にデータを可視化することで、見る人の行動も変えられるんだと身をもって経験して、永田先生の研究室を意識するようになりました。永田研究室に入ってからは、さらに学びが多く、有意義な学生生活を過ごすことができたと感じています。学生に対していつも温かく接してくださる永田先生には心から感謝しています。

Q 経営システム工学科の魅力は
学ぶ範囲が広く多岐に渡っているので、やりたいことが定まらない人にはお勧めだと思います。私も進学時にはやりたいことが定まっていませんでした。というのも自分の性向からして、理系科目が得意だけれど文系にも興味があったり、特定の技術を学びたいわけでもなかったりしたので、なかなかしっくりくる学科がなかったんです。
経営システム工学科は課題解決のための学問を学べるので、幅広い応用先があります。世の中にあるもの全てが対象と言っても良いほどです。「よく見て、見つけて、解く」という課題解決の道筋は、実は多くの問題・課題に共通しているものです。ですから、この考え方はどのような進路に進んでも「使える」と思うので、少しでも興味があれば経営システム工学科に進学してほしいです。