早稲田大学創造理工学部 経営システム工学科
経営システム工学研究室 写真

経営デザイン専攻
修士2年 鬼頭研究室

福重 寛隆

FUKUSHIGE Hirotaka

2021年度インタビュー

都市を「アクセスしやすさ」で再評価する

Q 研究内容を教えてください。
都市アクセシビリティという都市のアクセスのしやすさを定量的に評価する研究をしています。ある地点AからBに公共交通機関を使って移動するとして、AとBを直線で結んだルートに近ければ近いほど効率が良いわけですが、そんなところはなかなかありません。そんな視点でいろんな場所を調べていくとターミナル駅や人気の街で地価が高いところでも、移動のしやすさ=アクセシビリティが悪いような駅や地域があれば、その地価は見直されるかもしれません。
また、交通渋滞や駅の混雑など問題が起きた時に、現状では対症療法的な改善に留まってしまうことが多々あるのですが、この「都市アクセシビリティ」の知見を使えば、将来を見すえた全体最適な都市計画や交通計画も視野に入ってくる。国内外でスマートシティ等の実証実験が始まっていますが、この研究はそのような新しい時代のまちづくりにも寄与する余地があると思っています。

Q 他にもいくつか研究をされているそうですね。
所属する鬼頭研では興味があれば自分の研究以外のプロジェクトにも携わることができ、私自身も他にもう二つのプロジェクトに関わっています。
一つ目は手術のコミュニケーション分析で、これは他大学との共同で研究を進めています。手術の成功確率は極めて高く、そのほとんどが成功するのですが、実際の手術の過程では大きな事故に繋がりかねない小さなトラブルが発生していたり、危険度の高い作業を行っていたりします。これらのトラブルを解決し、難易度の高い作業を無事に終えるためには、執刀医やサポートする技術者、看護師などの手術チームでのコミュニケーションが欠かせません。この研究では会話の繋がりを可視化・分析することで、事故が発生する可能性がある局面でどのようなやり取りによって、未然に事故が防がれているかを解き明かすことを目的としています。
そしてこの研究で得られる成果は経験に頼らない手術教育や、医療ロボットなどを使用した精密な作業が求められ、チームワークが重要になってくる将来の医療支援システムの開発に役立つと考えています。
もう一つは世界中のスタートアップ企業を対象にイノベーションはどういう条件で起きるのかを分析する研究にも携わっています。
投資の流れから、どのタイミングでどんな規模の投資を受けると、特定の業界の盛り上がりやイノベーションが起きるのかを把握し、投資をする側にも受ける側にも幸福な戦略を導き出せればと思っています。

なにかとなにかの「間」にネットワーク科学はある

Q 研究が多岐に渡っていますね。
一見、ばらばらに見えるかもしれませんが、「ネットワーク科学」という点では共通しています。ネットワークというとインターネットなどの通信ネットワークなどを思い浮かべる人も多いと思うのですが、それとは違って「なにかとなにかの繋がり」のことを指しています。
先ほど挙げた例で言えば、都市の移動もネットワークだし、手術も投資も人や企業・投資家の間で展開され、関係性が重要なものですから、しっかり当てはまっています。
それらの構造に価値を見出し、相互作用や関係性を定量的に評価するということで、他の分野に関わることで新たな視点が得やすい分野だと思います。そういうこともあって、色々な研究に携わることが推奨されているのだと思います。

Q 経営システム工学科をおすすめするとしたら
私は高校生の時に音楽プレーヤーとイヤホンを買い、感動するくらい素晴らしいと感じたのですが、当時その製品を開発していた企業の経営は芳しくなく、「もの」は良いのに売れないわけだから、大事なのはマーケティングやマネジメントなのだろうと直感したことがきっかけで経営システム工学科を志しました。
理系で工学的な知識・技術をしっかり身につけながら、ビジネスの知見を学べるのはこの分野くらい。こんなに面白い学問はなかなかないと思いますよ。