早稲田大学創造理工学部 経営システム工学科
経営システム工学研究室 写真

経営デザイン専攻
修士1年 大森研究室

菊本 菜⽉

KIKUMOTO Natsuki

2021年度インタビュー

世界的なサプライチェーンを安定稼働させるために

Q 研究内容を教えてください。
サプライチェーンのリスクマネジメントについて研究しています。地震や洪水などの災害や、現在猛威を奮っているCOVID-19のような感染症などの、サプライチェーンの途絶をもたらしてしまうものを「リスクイベント」と呼んでいます。そんなリスクイベントが起きてしまったときに、サプライチェーン全体にどのような影響が及ぶかというのを可視化することで、対策を打ったり、サプライチェーン全体の設計を見直したりするような、意思決定の一助となれればと思って研究を進めています。
私が着目しているのは「Ripple effect」という概念です。サプライチェーンでは原料に近いものを上流、製品に近いものを下流と表現しますが、リスクイベントが起きてしまったときに、工場の稼働が止まってしまうという直接の被害だけでなく、さらに下流にも影響を与えてしまうことを指します。そのRipple effectがどの部分にどのように現れるのかを、様々なシナリオで可視化し、最適化したサプライチェーンを組むにはどうすれば良いかというところまで研究を進めたいと考えています。

Q この研究を選んだ理由は?
サプライチェーンに興味を持ったのがきっかけです。特に昨今では世界中をまたにかけたグローバル・サプライチェーンが主流で、スケールの大きなものを扱えるということに魅力を感じました。
また、現場主義であることも研究室を選んだ決め手の一つとなりました。私が学部時代に所属していた吉本研究室では、実際の現場で活動できるさまざまなプロジェクトを主催していました。
研究室配属前の学部2年生の頃に、国内の製薬会社の改善プロジェクトに参加して、完成した製品をトラックに積み込むまでの過程の改善に取り組みました。具体的には、作業員の方に張り付いて、デシマル計と呼ばれるストップウォッチで作業時間を計測。待ち時間が長ければ、その部分の人員を入れ替えたり、配置を変えたりするなど細かな作業を行い、実際に改善計画を提案しました。慣れない環境下での作業は大変でしたが、先輩方の姿に刺激を受けたのと、この経験が面白く、研究したい分野を決めるきっかけとなりました。
研究室配属後の3年生時には、ミャンマーの工場でのプロジェクトに参加。こちらでは、電子精密機器の部品を生産する工場の改善に取り組みました。
作業員の方の作業を計測、観察して改善するというのは変わりませんが、より生産現場に近いところでラインの改善をしました。3週間ほど現地に泊まり込んでの作業だったのですが、2年生時の学年とは違い、チームで成果を出すために、積極的にコミュニケーションをとったり、担当の分担をしたりするようなマネジメントというと大袈裟ですが、そういう面も鍛えられた気がします。


ミャンマーの工場プロジェクト

理系の視点で問題解決をするのが「経シス」

Q 大森研究室は経営デザイン専攻ですがシステム専攻と違いはありますか?
「現場に即した価値を生み出すこと」に焦点があたっているところでしょうか。先ほどのプロジェクトの例でも、やることは現場に入って計測し、改善点を出すことでした。その範疇に入るものであれば、サプライチェーンのようなスケールの大きいものから、工場からの積み出しのような一見小さい仕事にも適応できる。そんなところも「デザイン専攻」の面白いところかもしれません。
もっとも、経営システム工学科からの進学先として2専攻があるわけですから、根本は変わらず、「工学的に問題を解決する」ということだと考えています。「経営」という言葉が入っているので、文系の経済や商学部に近いような印象を持つ人も多いと思うのですが、経シスはやはり理系であり工学。数理的な思考が根本にあるのが文系との違いだと思います。
「世の中の仕組み」のようなものに興味があり理系を志すようであれば、ぜひ経営システム工学科をお勧めします。