早稲田大学創造理工学部 経営システム工学科
経営システム工学研究室 写真

経営システム工学科
学部4年 高橋研究室

髙橋 実可子

TAKAHASHI Mikako

2021年度インタビュー

ベーシックインカムの有効性を検証する

Q 卒論の内容を教えてください。
社会保障制度の制度設計について研究しています。様々なシナリオを考えて、それをシミュレーションによって、どのような作用が起こるかを示して、政府等の意思決定者が参考にできるようなものができればと思っています。
社会保障制度にも様々なものがありますが、私は「ベーシックインカム」に着目しました。これは収入や性別や年齢等のあらゆる差異に関わらず、一定額を国民全員に給付するというものです。
諸外国では実証実験が行われていることが知られていて、近年話題の方式ですが、それらの社会実験や実証実験は期限が決まっていたり対象となる人々も決まっている。本当に制度を導入して、何年、何十年という期間が経ったときにどのような結果になるのか、誰もわかっていないんです。
ベーシックインカムを受け取ったひとたちの行動を、数式に落とし込んでシミュレーションすることで、どのようなインパクトがあるのか—勤労意欲はどうなるのか、幸福度はどうかというようなこと—を探っていきたいと思っています。

Q ベーシックインカムを選んだ理由は
卒論のテーマを決めるにあたって、社会保証制度を調べたり先行研究にあたってみたのですが、ベーシックインカムについては思想的、哲学的な見地で語られることが多く、定量的にどのような影響を与えるかということに、あまり光があたっていなかったのです。どうある「べき」であるという話ばかりで、実際どのような効果があるのかについて理系的な回答が出せたら面白いなと思ったのです。
私はもともと青年海外協力隊のような途上国の支援に興味を持っていました。国際協力機構(JICA)や外務省などに入って、そんな仕事がしたいと思っていたんです。
ところが年齢を重ねて、日本の現実を知るにつけワーキングプアや外国人労働者の問題など、国内での貧困の実態を知るようになり、まずは国内の課題解決に尽力する必要があるのではないかと考えるようになりました。
ベーシックインカムがうまく運用できるのであれば、これらの人を救いながらさらに生産性が高く、やりがいのある仕事ができるようになるのではないかと興味を持つようになったのです。

シミュレーションは「未来」を知るためのもの

Q 高橋研究室を選んだ理由は
高橋先生がよくおっしゃることなのですが、今注目を集めているAIにしてもORにしても過去のデータから解を導き出すものでだと。一方、シミュレーションというのは、ある条件の「未来」を知るための手法で、そこに他とは違う価値があるということ。
実世界に既に存在するデータから示唆を得ることも、もちろん重要ですが、複雑な社会構造をコンピュータ内で簡略化して未来の可能性を示せるシミュレーションは「面白そう」と直感的に思ったのです。さらにコンピュータシミュレーション技術の進歩によって、適用可能な社会課題や研究テーマが広がったり、より大規模なシミュレーションの構築ができるようになったりしている点にもやりがいを感じました。
あとは研究室の雰囲気ですね。就職も視野に入れていたので、もし研究がこれで最後だとしたらどっぷり研究に浸かりたい。研究室訪問の際に、同期だけでなく、先生や先輩方ともコミュニケーションの取れる環境が十分にあると感じて、ここなら皆で協力し合いながら、悔いなく研究や学生生活が送れると思ったんです。
また、研究室だけでなく、経営システム工学科の人たちも、魅力的な人が集まっています。長期インターンに行く人、プログラミングを極めようとする人、はたまたサイクリングで日本一周する人もいて、本当にいろんな人がいます。もちろん、学業はしっかりやった上ですが、学業以外にも何かやりたいことがあったり、見つけたかったりする人にはお勧めですね。先輩たちが必ずサポートしてくれるはずです。

※OR(オペレーションズ・リサーチ) 数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法である。